歯の根の根分岐部病変とは?
歯の根っこが複数ある奥歯の歯根が、二またに分かれ分岐した部分を根分岐部と言います。
その根分岐部に歯周病の細菌感染が起こり、歯の周りの骨が吸収して無くなる病気を根分岐部病変と言います。
原因は歯周病や虫歯、歯髄疾患、歯根の亀裂・破折、パーフォレーション(何らかの原因で歯に穴があいた状態)、咬合性外傷、歯のくいしばりなどです。
根分岐部は、複雑な解剖学特徴を持つことから、根分岐部病変は他の部位の歯周病よりも、進行が早く、治りにくいため抜歯のリスクが高いと言われています。
また、年齢が高いほど、根分岐部病変が進行している傾向にあり、噛む力が強い男性にやや発症が多いです。
上記のとおり、根分岐部は、解剖学的に複雑な形態であり、分岐部は、ほら穴のような形態で、器具が入っていかないため患者さんによるプラークコントロールも、歯科医院での歯石除去も大変困難です。
根分岐部病変の進行度が進むと、その歯の生存率が低下します。
根分岐部病変の存在は、歯周病の管理を著しく困難にしているのです。
歯周病になってしまった歯をどのように残していくか・・。
特に、難しいと言われている奥歯である、大臼歯の根分岐部病変で骨吸収している場合にどのように対応するか、さまざまな多様な考え方があるなかで、他院では抜歯と診断された歯を、当院の治療により救い、機能している症例を提示しながら説明します。
①まずは、診断の指標となる分類を目安に治療計画をたてます。
根分岐部病変の進行度の目安
Glickmanの分類
1級: 根分岐部に初期の病変があるが、X線写真上では歯槽骨には病変は無い
2級: 根分岐部の歯槽骨が一部吸収されているが、プローブは貫通しない
3級: 根分岐部の歯槽骨が吸収され、プローブが貫通するが、歯肉に覆われている
4級: 根分岐部が完全に露出し、プローブが貫通している
LindheとNymanの分類
1度 : 根分岐部にプローブ(探針)が挿入できるが、歯の幅の1/3以内まで
2度 : 根分岐部にプローブ(探針)が1/3以上挿入できるが、貫通はしない
3度 : 根分岐部にプローブ(探針)を挿入すると、プローブが貫通する
この分類などを考慮して、まず治療方針を決めていきます。
②根分岐部病変治療の流れ
Ⅰ度(軽度)の根分岐部病変を伴う歯周病については、SPT(Supportive Periodontal Therapy)という歯周病菌をコントロールすることによって経過観察を行いながら対応することができますが、明らかに進行性の歯周病で、Ⅱ度異常の根分岐部病変を伴う歯周炎罹患歯については、早期に、外科的処置を含めた積極的な治療が必要となります。
Ⅱ度以上の根分岐部病変の治療においては、歯周組織再生療法か、切除療法を選択します。
歯周組織再生療法は、すでに破壊された歯周組織の再生は難しいと考えられていましたが、技術と医療の発達によってGTR法やエムドゲインが開発され、破壊された歯周組織を再生させることができるようになりました。
なので、歯周病治療の最終手段として考えても良いかと思います。
歯周組織再生治療とは
歯周組織再生用の材料を使用して、歯周組織を回復させる治療です。
比較的軽い歯周病であれば、歯や歯の周りを清潔に保つ治療を続けて治すことができます。
しかし、炎症が歯肉の奥まで進行し、歯周組織の破壊がひどい場合には、歯周組織を回復させるための手術(歯周外科手術)が必要になります。
歯周組織再生用の材料は当院ではエムドゲインを第一選択として治療しています。
エムドゲイン以外の歯周組織再生療法として、エムドゲインの他にGTR(歯周組織誘導法)という歯周外科治療もありますが、GTRはエムドゲインに比べると術式が難しいため、より高度な専門性が求められます。
エムドゲインはGTRほど術式が難しくなく、オペの回数や身体的負担が少なく、合併症のリスクが少ないのがエムドゲイン治療のメリットです。
歯周組織再生療法の治療期間
機能的かつ健全な歯周組織を取り戻すまでには半年から1年程度。
歯周組織が再生する期間、および程度は個人差があり、歯周病の進行具合、全身疾患の有無、体調によっても異なります。
術後の治療管理も患者さんによって異なります。
歯科医師および衛生士さんの指示に従い、必ず定期的な検査とフォローアップを受けるようにして下さい。
治療が終了した後の管理具合で本当の勝負が決まり、口の中の衛生状態が治療成績に、かなり左右します。
歯周病を再発させないためには、歯や歯の周りをいつも清潔に保つことが大切です。
エムドゲインとは?
エムドゲインは、歯周病で溶けてしまった顎の骨や歯根膜などの歯周組織を再生させる歯周組織再生療法の一種です。
「エムドゲイン・ゲル」というタンパク質の一種を歯根の表面に塗ることで、歯が生えてくるときと同じような環境をつくり歯周組織の再生を促します。
エムドゲイン・ゲルの主成分は、「エナメルマトリックスデリバティブ」と呼ばれる、歯胚組織からつくられたタンパク質の一種です。このタンパク質が、歯が生えてくるときと同じような環境を再現し、歯周組織の再生を誘導します。
tissue regeneration
エムドゲインゲルは、歯周治療における歯周組織再生環境を提供します。
歯周組織に存在する各細胞に対し、創傷治癒環境を提供する歯胚組織を使用した歯周組織再生用材料です。
エムドゲイン® ゲルによる歯周組織再生治療
歯周病治療と歯周組織再生
歯周病により歯周組織が破壊されると結合組織性付着が失われます。そこには深い歯周ポケットが出来上がり慢性的な歯周病菌の増殖が出来上がります。
理想的な歯周組織の再生は、接合上皮付着が最小限必要であることに加えて、コラーゲン繊維が封入された新生セメント質の形成による新付着と、これに伴う新生骨を獲得することなどであり、この再生すなわち歯周組織再生を可能にするために、今まで様々な研究がなされてきました。
そのひとつとして失われた歯周組織を修復するために、歯周外科治療などが試みられていますが、多くの場合、ごく一部の結合組織性新付着と長い上皮性再付着の形成による治療となっています。
エナメルマトリックスたん白質
歯の発生期に重要な役割を果たすタンパクのひとつに、エナメルマトリクスたん白質があります。このたん白質はエナメル上皮が分泌するアメロジェニン・ファミリーのひとつで、歯根形成時にヘルトウィッヒ上皮からも分泌されており、エナメル質の形成だけでなく、セメント質の形成や機能性を有した付着組織の発達に関わることが示されています。このことからエナメルマトリックスたん白質は、歯周組織再生環境の提供に役立つと考えられています。
EMDとは、エナメルマトリックスたん白質を含むたん白質分画であり、このEMDに着目した製品がエムドゲインゲルです。
細胞レベルでの作用
エムドゲインゲルは不溶性たん白質のマトリックスを形成します。このマトリックスは歯根表面に2~4週間とどまり、選択的な細胞の定着、増殖と分化を可能にします。
エムドゲインの作用機序
- 根面清掃後に骨欠損を満たすようにエムドゲインゲルを塗布します。
- アメロジェニンが歯根表面にマトリックスの層を形成します。
- フィブリンと赤血球による血液凝固(血餅)の形成。肉芽組織の置換。
(再生のためのスペース) - 歯周組織、血液から間葉系細胞が誘導されます。
- 間葉系細胞から特異的なサイトカインと増殖因子(GF)が分泌。
再生に必要な細胞の増殖・分化を促します。
エムドゲインゲルによる上皮細胞の増殖抑制活性は、
上皮の根尖方向への埋入を防ぎます。 - セメント芽細胞が誘導・分化。
セメントマトリックスが形成され、コラーゲンの太い束からなる歯根膜線維が伸張します。 - 新セメント層が厚みを増し無細胞セメント質を形成。
歯根膜線維が歯根表面に定着します。 - 新しい歯周組織が骨の欠損部分を埋めます。
セメント質、歯根膜を形成します。 - 歯根表面と欠損部分に新しい歯槽骨が作られます。
生物学的幅径(biological width)の相互作用より歯槽骨を形成。
骨芽細胞が活性化され欠損部を歯槽骨で満たします。 - 歯根膜・歯槽骨が再生(形成)。
新しい機能的付着が生まれます。
治療目的、効能または効果
歯周ポケットの深さが6mm以上、X線写真上で深さ4mm以上、幅2mm以上の垂直性骨欠損を有する中程度または重度の周囲炎の歯周外科手術の際に、露出された歯根面上に適用します。
エムドゲイン歯周組織再生の実績
Straumannのエムドゲインは、喪失した歯周組織の再生を誘発することにより歯周炎患者を治療する効果的なソリューションであり、優れた治癒効果、低い手術合併症発生率および長期的臨床効果により(他の治療法と比較して)高い治療満足を得られていることが20年以上にわたって証明されています。
つまり、エムドゲインは、世界中で使用されている再生療法の中で最も信頼できる生体材料です。
厚生労働省の認可もされており、世界だけでなく、日本の学会でもその有用性がエビデンスとして報告されています。
- 250万人以上の患者に対する治療実績
- 15年以上にわたり実証されている安定した治療成績
- 800以上の学術文献
- 200以上の臨床文献
- エムドゲイン起因の副作用報告なし。
歯周再生治療費
エムドゲインは、保険が効かない治療法で自費扱いです。
歯周外科手術時間は約40分。
詳しくは料金表ページをご覧ください
心から「歯周病を治したい」と願う患者さんと、当院は、共に歩んでいきたいと思っています。
なぜならば、お口の健康は、私たちがいくら頑張ったとしても、患者さんも共に頑張って頂けなければ決して達成できないためです。
これまで長い時間をかけて他院で治療してきたが、一向に改善する気配もなく、担当医も歯周基本治療の方向性を変える気配もないという事に不安を持たれている方は多いのではないでしょうか?
また、ドクターに質問しても、「歯周病治療は慢性疾患なので、どうしても時間がかかってしまう、気長に治療しましょう」など言われ不安になることも多いかと思います。
歯周病治療は患者様のご協力がなければ完治しない治療ですので、患者様の「納得」のために、セカンドオピニオンをお勧めいたします。
当院のセカンドオピニオンを受けたからと言って、当院での治療及び自費治療を無理に勧めるわけではございません。
佐賀市当院へお気軽にご相談下さい。
池田歯科医院・こども歯科:https://ikeda-shikaiin.com/
〒840-0859 佐賀県佐賀市新栄西1丁目2-45
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