歯医者さんと児童虐待ネグレクトとの役割。マルトリートメントとは?

   

児童虐待と虫歯の関係性

幼児1000人に2人の割合で虐待が起こっている現実。

虐待を受けている子どもの多くは乳幼児、就学前の児童であり闇に隠れ潜在的に身近に起きています。
マルトリートメント(maltreatment)は、「不適切な養育」という意味で、児童虐待やネグレクトを合わせた言葉です。

身体的虐待・性的虐待・心理的虐待では何かを積極的に行うのに対し、ネグレクトは何かをしないという虐待のため、積極的に暴力を振るうというような虐待とは異なり、どこからがネグレクトなのかが判断しにくいという特徴があるため欧米では、ネグレクトは虐待という言葉にプラスした、「マルトリートメント=虐待+ネグレクト」という言葉で表します。

マルトリートメントは、心理的外傷PTSDにより、脳の発育が阻害され、更に脳が萎縮することが分かってきました。
さらに虐待やネグレクトを受けた子供は、わざと嫌われたり大人をイラつかせるような行動を取る傾向があり、里親の元や養護施設内でも不利益や新たな虐待を受けやすいのです。

その原因は最初に受けた虐待により他人を信用できなくなり、人間嫌いと愛着形成ができず、暴力や支配関係以外での人間関係を作れなくなってしまい逆に自分が加害者となり年下の子や弱い者をいじめる、将来自分の子供を虐待するリスクが高いといった負の連鎖が始まります。

歯医者さんの視点では、口腔内環境は子どもの生活習慣や保護者の育児姿勢を表す指標になり、ネグレクトや児童虐待を疑う重要な手掛かりにもなります。

つまり、ネグレクト(育児放棄)・虐待を受けている児童と、虫歯の数の関係性はあるんです。
単純に「虫歯が多い=虐待」と決め付けるのは短絡的ですが、虐待やネグレクトされた乳幼児は1人あたりの虫歯の本数が平均15倍多く、育児放棄された児童(12歳)では、大部分の永久歯が虫歯だったとする調査結果も報告されています。

暴力や虐待などでは身体に傷が残るので発見を視覚的にしやすいのですが、育児放棄の発見は難しいのです。
しかし、虫歯であれば親が身体に傷を負わせないようにしてようが、発見ができるので歯科医の観察眼が大切になってきます。
例えば、口の中を見てビックリ。
ほとんどの乳歯が壊滅状態なのです。
母親は、表情一つ変えず
「別に・・しゃーない」の一点張り・・。

未処置の多発性う触

痩せて顔色が悪く明らかに栄養状態に不安を覚え、児童相談所に相談し追跡調査をお願いしました。
保健師が家庭訪問を行った、その後の調査によると、父親が無職で母親は毎日DV(家庭内暴力)に遭っており、アルコール依存症になって水商売の仕事をして生計を立て、情緒不安定で子育てどころではない背景です。
その後、子どもの養育どころではないと判断し、保護されるケースがありました。

虐待によるアザや怪我から発覚を恐れて内科や整形外科に連れていかない保護者も、中々泣き止まず、しょうがなく歯医者に連れて来る児童虐待する保護者も中にはおり、保護者の心理面からも歯医者はハードルが低いのです。
こうした児童虐待やネグレクト(育児放棄)を早期に発見するため、子どもの歯と生活環境や保護者の子供に対する意識の「歯科医の観察眼」が大切だと思います。

子どもの異変に気付ける歯科医師ならではの特性

歯科医師はこの年齢の子どもたちの虐待を早期発見できる理由として、以下のような優位性を持っています。

  • 1歳6ヶ月健診、3歳児健診などの機会を通じて、子どもと親の両方と接触できる
  • 虐待行為が隠ぺいされていても、口の中の状況から推測できるケースがある
  • 診療室では保護者などの付添者を退室させて歯の治療を行うことも可能なので、子どもをよく観察し、今の生活環境や虐待の有無や育児放棄の聞き取りが可能。

今後、教育機関や歯科医療の現場と児童相談所や保健所、地域の子育て支援機関が連携して、児童虐待・育児放棄を早期発見する機会が増えていくことになれば、まだ幼い命が途絶えてしまう大きな被害が出る前に保護することができる可能性が広がってくると思います。

虐待かもと思ったら189番へ



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